月下美人のルーツ
白色の大輪を咲かせながら、部屋を芳香で満たす月下美人。
夏の夜に咲いたと思ったら喜ぶ間もなく花を閉じてしまう一夜花。
それゆえ夜咲き柱(Night-blooming Cereus)とも呼ばれています。
月下美人はどうして夜咲くのでしょうか。
この疑問に応えるために月下美人のルーツを探ってみました。
月下美人はクジャクサボテンと同じ森林性サボテン(Jungle Cactus)に属します。■月下美人はクジャクサボテンと同じサボテンの仲間
■森林性サボテンへの進化
長年の気候の変化により、生息環境が変わり乾燥状態に順応して進化した植物が、
再び森林に移動して形や性質を変化させたのが森林性サボテンです。
原産地はメキシコからブラジル、ベネズエラにかけての中南米です。
■月下美人は原種
月下美人やクジャクサボテンがサボテンに属することは先に述べた通りですが、
学名は
月下美人がエピフィルム・オキシペタラム(Epiphyllum
Oxypetalum)
クジャクサボテンがエピフィルム交雑種(Epiphyllum
Hybrid, Epiphyllum Hybrid spp.)
です。(spp.はspeciesの複数形で2種以上の種が含まれることを示す)
これはクジャクサボテンがエピフィルム属を中心に交配を重ねて作られたものであり、
花の色も非常に多く(1000種以上。このためJungle Orchid Cactus:ジャングルに咲くラン
のように豪華な7色のサボテンの花とも命名されています)になっていますが、月下美人は
もともとこれが原種であり、その仲間も20種程度であり色も白色のみです。
花のすばらしさ、名前に惹かれて特に日本で人気の高い月下美人も、もとをたどれば
1つの株から増やされたようです。
ちなみに月下美人の仲間として満月美人、歌麿呂美人、鳳凰の舞、姫月下美人などが
あります。
■月下美人はなぜ夜開花するか
月下美人はなぜ夜に開花するのか。これは月下美人が中南米の森林地帯という
環境の中で生息していることと関係がありそうです。
月下美人は原種としてもともとの習性を今日に至るまで残しており、いくつかの
特徴があります。
そこで、これについて調べたところ、ずばり岩波書店、井上健氏著 ”月下美人は
なぜ夜咲くのか(1995年)”という本が発刊されており、植物学の観点で月下美人に
ついて以下のコメントがありましたので紹介します。
<月下美人の花の特徴>
・夜開花する。
・花の色がどちらかというと白やくすんだ色が多い。
・夜間に強いにおいを放出する。
・花の蜜が非常に多い。
・蜜が花の筒などの奥にかくれることなく露出している。
・花自体が木の間に生じるのでなく、木の幹などから直接生じ、障害物が
あまりない位置に形成されている。
これは中南米の森林地帯を夜に飛び交っているコウモリによって花粉媒介する花の特徴
として紹介されていました。
推測ではありますが、コウモリが月下美人の存続に欠かせない存在となっていたようです。
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